運動前のストレッチの効果を知りたい人
「いつも運動前になんとなくストレッチを行なっているんだけど、実際、ストレッチってどれくらいやったらいいんだろう?」
こんな疑問に答えます。
こんにちは。キクチです。
今回のテーマは「ストレッチ」です。
記事を読み進める前に、ぜひ1度考えてもらいたいのですが、
ここでは敢えて、「効果的な」と、あいまいな質問で問いかけてみました。
たぶんですが、いつもご自身で行なっているストレッチをイメージされたのではないでしょうか?
効果的じゃないストレッチをしても、しょうがないですよね。
例えばですが、これから腕相撲(アームレスリング)をするのに、ふくらはぎの筋肉をストレッチする人がいるでしょうか?
たぶん、いないですよね。
もし、「する」と答えた方いたら、スミマセン。
きっと、ランニングの前にストレッチをしている方は、ストレッチに何かしらの効果を期待しているはずです。
では、ストレッチに期待する効果とは何でしょう?
- パフォーマンスアップ
- 柔軟性アップ
- ケガ予防 ...など
実は運動前のストレッチする時間によって得られる効果がまったく異なるという研究データが発表されていましたので、今回は「効果が得られるストレッチの時間」についてご紹介します。
参考文献
Duration Dependent Effect of Static Stretching on Quadriceps and Hamstring Muscle Force
Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review.
運動前に行う効果的なストレッチの時間
そもそもなんですが、最近では「運動前のストレッチが果たして効果的なのか?」という説がかなり有力なんです。
2012年イギリスのノーサンプトン大学から発表された論文では、
という結果が出ています。
ここでいう、スタティックストレッチとは静的なストレッチのことを指します。
特に反動をつけたりせず、じーっと筋肉を伸ばすイメージです。
たぶんですが、日本人のほとんどが行なっているストレッチはこのスタティックストレッチだと思います。
勘がいい方は、
と、気づいたかもしれませんね。
静的じゃないストレッチは、ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)と呼ばれており、実はこのダイナミックストレッチも「運動パフォーマンスには影響がない」というデータが2011年にカナダのニューファンドランドメモリアル大学から発表されています。
参考文献
A review of the acute effects of static and dynamic stretching on performance.
つまり、
- 静的ストレッチはパフォーマンスを低下させ
- 動的ストレッチはパフォーマンスによくも悪くもない
という説が、最新のものと考えられていました。
ただ、2018年、トルコのガジ大学の研究では、面白い結果が出ています。
国内1部リーグで活躍するサッカー選手とバスケットボール選15人に協力してもらい、
- 5分ジョギングのみ
- 5分ジョギング + 15秒の静的ストレッチ
- 5分ジョギング + 30秒の静的ストレッチ
- 5分ジョギング + 45秒の静的ストレッチ
と、実施した後に、それぞれ大腿四頭筋とハムストリングの筋力を測定しています。
その結果、30秒以上ストレッチを行ったグループは、筋力が低下していたのですが、15秒のストレッチは筋力が上がっています。
この研究では動的ストレッチについては検討していないのですが、この研究から分かることは、
ということです。
どちらにせよ、30秒以上のストレッチはあまり効果がなさそうなので、短時間でストレッチを済ませ、コーヒー飲んでレースに臨むのがよさそうですね。
「カフェインと運動パフォーマンスの関係」についてはこちらの記事に書いておりますので、よかったらどうぞ。
マラソンでカフェインを飲むと、17%パフォーマンスアップ【科学的根拠あり】
マラソンとカフェインの関係についてまとめています。2009年のコネチカット大学の研究では、「運動とカフェイン」をテーマにした先行研究21件のデータをメタ分析しております。この結果、カフェインを摂取すると最大:17.3%、平均:3.2%もパフォーマンスが上がっていました。
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運動後は「マッサージ + ストレッチ」が効果アリ
運動前に30秒を超えるストレッチがあまり効果的ではないことは分かったのですが、「運動後はどうなの?」という質問がありそうだったので、あらかじめお答えしておきますが、運動後もストレッチはあまり推奨できないんですよね。
といいますのも、2018年のポワティエ大学の研究は、運動とリカバリーに関する研究99件を精査したメタ分析で、「効果があるリカバリー方法」について検証してくれています。
その結果、運動後のストレッチは、運動後のリカバリーにも「効果がない」ことが分かっています。
参考文献
ただ、マッサージと合わせてストレッチを行うと、相乗効果があり、筋肉のダメージをもっとも軽減できるようです。
なので、ランニングの後はマッサージとストレッチに時間とお金をかけるのが1番よさそう。
マッサージできるところはEPARKリラク&エステを使うと便利なので、ぜひお試しください。
「運動後のリカバリー」についてはこちらの記事に書いておりますので、こちらもよかったらどうぞ。
クールダウン(アクティブリカバリー)の効果【科学的根拠あり】
米国運動協議会(ACE)で発表された報告を調べたところ、効果的なクールダウンがわかってきました。効果的なクールダウンは...
まとめ
以上のことからまとめると、運動前のストレッチはひとつの部位にかける時間は15秒程度で、運動後に行うのであればストレッチとマッサージをセットで行うのがベストって感じですね。
僕は昔はひとつの部位を丁寧に1分くらいかけてストレッチしていたのですが、それがむしろ逆効果というエビデンスが分かってよかったと思っている反面ちょっと悲しいです。
というのも、学校の部活では「ていねいに時間をかけてストレッチしなさい!」と教えられてきたので、それに従って頑張ってストレッチしてきたのに・・・。
まぁ、生まれてきた時代が異なるので、仕方がないのですが、もし、このブログを読んでくださっている方で
という方がいらっしゃれば、「普段、運動する前ってどんなストレッチをしているの?」と聞いてみてください。
もし、チャンスがあれば、ストレッチの最新の科学をお伝えいただけたら嬉しいです。
日本のスポーツ生理学は、まだまだ遅れており、「乳酸は疲労物質だ!」と考えている方も多くいらっしゃいます。
そう思っていた方はこちらをご覧ください
少しでも「自分の限界に挑戦するスポーツ選手を応援したい」という想いでこのブログを書いていますので、未来のアスリートを含め、多くのスポーツを愛する方のお役に立てれば光栄です。
他のランニングに役立つ情報はこちら↓
他にも「運動とストレッチの効果」に関する論文がありましたら、Twitter(@atskikuchi)のDMで教えてください。
それでは!